ノルウェイの森 村上春樹

村上春樹の小説を始めて読んだが、作品の中に引き込まれるような不思議な感覚を覚えた。いささか官能的すぎるといえる表現も作品の中では欠かせない要素の一つとして描かれている。

西加奈子の「サラバ」といい、一人称が男のストーリーはつい自分だったらと、重ね合わせて読んでしまう。

個人的には永沢さんの「努力と労働は違う。一般人がやっているのは努力ではなく労働だ。」という発言が印象的だ。他者から与えられて行う行為は全て労働で、努力には自らの意志が伴っている必要があると解釈した。

周りからの評価を基準に行動を選択するのではなく、自分の気持ち、考えを優先して生きていくことの重要性についても繋がる話と思った。

ラストの「ここはどこだ」という主人公の気持ちは自分の立場、存在、状態に対しての不安定さとこれからの将来に対する不安が感じ取れた。直子亡き後、これからの人生を歩もうとする主人公の決意と不安が入り混じった複雑な心境だったと思う。